【甲状腺機能と心血管イベント】
こんにちは。
今回は、内分泌内科で日常的によく診療する「甲状腺機能」と「心血管イベント」の関係について解説します。
「甲状腺の病気」と聞くと、首の腫れや疲れやすさを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には、甲状腺ホルモンは心臓や血管に非常に大きな影響を与えており、放置すると不整脈や心不全、脳梗塞などにつながることがあります。
⬛︎そもそも甲状腺とは?
甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、「甲状腺ホルモン」を分泌しています。
このホルモンは、
・心拍数
・血圧
・代謝
・体温
・コレステロール
・筋肉や脳の働き
など、全身のエネルギー調整に関わっています。
つまり、甲状腺ホルモンが多すぎても少なすぎても、全身に影響が出ます。
⬛︎甲状腺機能亢進症と心血管イベント
まず、ホルモンが「多すぎる」状態です。
代表的なのはバセドウ病です。
甲状腺ホルモンが過剰になると、身体が常に“アクセル全開”のような状態になります。
<よくある症状>
・動悸
・息切れ
・手の震え
・発汗増加
・体重減少
・イライラ
・不眠
などがあります。
<特に注意したい「心房細動」>
甲状腺機能亢進症で最も重要な心血管合併症の一つが
心房細動(しんぼうさいどう)
です。
これは心臓が不規則に細かく震える不整脈で、
・動悸
・息切れ
・めまい
を起こします。
問題はそれだけではありません。
心房細動があると、心臓内に血栓(血のかたまり)ができやすくなり、それが脳へ飛ぶことで
脳梗塞
を引き起こすリスクが上昇します。
高齢者では、「実は甲状腺機能亢進症が原因だった」というケースも少なくありません。
<心不全につながることも>
甲状腺ホルモンが多い状態では、心臓は常に頑張り続けています。
長期間放置すると、
・心臓が疲弊する
・心拍数が高い状態が続く
・不整脈が悪化する
ことで、心不全に至ることがあります。
特に高齢者では、症状が典型的でないことも多く、
・「最近食欲がない」
・「なんとなく息切れ」
・「体重が減った」
程度の症状しか出ない場合もあります。
⬛︎甲状腺機能低下症と心血管イベント
次に、ホルモンが「少なすぎる」状態です。
代表的なものは、橋本病による甲状腺機能低下症です。
こちらは逆に、身体が“省エネモード”になります。
<よくある症状>
・疲れやすい
・むくみ
・体重増加
・寒がり
・便秘
・眠気
・抑うつ気分
などがあります。
<コレステロール上昇に注意>
甲状腺ホルモンが不足すると、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が上がりやすくなります。
その結果、
・動脈硬化
・狭心症
・心筋梗塞
などのリスクが高くなる可能性があります。
「コレステロールが高いから脂っこいものを控えよう」だけでなく、背景に甲状腺機能低下症が隠れていないか確認することも重要です。
<徐脈や心機能低下も>
甲状腺ホルモンが少ないと、
・脈が遅くなる(徐脈)
・心臓の収縮力低下
・心嚢液貯留(心臓に水がたまる)
などが起こることがあります。重症例では心不全に至ることもあります。
<「軽度異常」でも注意が必要>
最近は健康診断で、
・TSHだけ高い
・FT4は正常
といった、潜在性甲状腺機能低下症が見つかることも増えています。
軽症だから絶対安全、とは言い切れません。
特に、
・高齢者
・心血管リスクが高い人
・糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
がある場合は、動脈硬化との関連が議論されています。
ただし、治療すべきかどうかは年齢や数値、症状によって変わるため、自己判断は禁物です。
⬛︎こんな症状があれば相談を
次のような症状が続く場合は、甲状腺機能異常が隠れている可能性があります。
甲状腺機能亢進症を疑う症状
・動悸
・手の震え
・汗が多い
・急な体重減少
・脈が速い
甲状腺機能低下症を疑う症状
・強い疲労感
・むくみ
・体重増加
・寒がり
・コレステロール高値
採血で比較的簡単に評価できるため、気になる場合は内科や内分泌内科に相談してください。
⬛︎まとめ
甲状腺ホルモンは、心臓や血管に大きな影響を与えます。
・甲状腺機能亢進症
→心房細動、脳梗塞、心不全
・甲状腺機能低下症
→動脈硬化、心筋梗塞、徐脈、心不全
につながることがあります。
「ただの疲れ」「年齢のせい」と思っていた症状の背景に、甲状腺機能異常が隠れていることも少なくありません。
特に、
・動悸
・息切れ
・不整脈
・原因不明のコレステロール上昇
がある場合は、一度甲状腺機能を確認する価値があります。
早期発見・適切な治療によって、心血管イベントのリスク低下が期待できます。
